埋蔵文化財包蔵地の住宅建設で縄文土器が出土その対処と見解

2023年01月6日


昨年末に足場が解体され新年を迎えました。足場が無くなったことで外構工事が出来るようになり、年始めは浄化槽工事からスタート。外観が現れ「完成が楽しみですね!」と道行く地元の方に声を掛けて頂く場面もありました。2月の完成に向け現場はいよいよ大詰めです。@相模原市緑区、新築住宅計画「屋外と屋内とその間がある平屋(仮称)」

 

埋蔵文化財包蔵地の住宅建設で縄文土器が出土
その対処と見解

相模原市緑区の市街化調整区域。周囲は田畑の広がる自然豊かな環境である以上に、実は埋蔵文化財包蔵地※の指定を受けた土地における少し特殊な家づくり計画として進んで参りました。土地は梅畑だった農地から施主が譲り受け宅地へ転用。住まい本体では、地盤調査の結果から建物下全体を900mm掘って砕石を入れ、地盤を補強して対応しています。その下の土は触らないことを約束することで、文化財保護課の許可を経て住宅建設が可能となった経緯があります。

一方、本件は住宅で生じる下水を排水出来る下水道が現時点で整備されていないため、相模原市の負担で敷地内に合併浄化槽を設置する必要がありました。浄化槽設置で必要な掘削は深さ2m。部分的ですが建物本体に必要だった掘削900mmを超えた深さのため、より慎重に向き合う機会であることは間違いありません。浄化槽設置場所の土を掘り出したタイミングで、文化財保護課担当者の方による調査が入り、私自身も立会いました。

土工事の職人さんがバックホウ(ユンボ)と手掘りで正確に掘削した穴に、文化財保護課の方が梯子で降りて調査がスタート。掘削の表面全体を手作業で薄く土を削ぎ落しながら、何かしらの出土を調べるかたちで進行しました。そして当初から文化財保護課で想定されていた通り、深さ1100~1500mmあたりに周囲より黒い色の縄文時代の地層。深さ1200mmのところから私の目の前で縄文土器のかけらが2つ出土しました。触っても良いとのこと。直接触れ歴史を感じることが出来ました。

<見解>
「土器が出土したとなれば、浄化槽工事はストップですか?」とお聞きしたところ、状況が確認出来たので、本件の場合は現場をとめるようなことは無いとのこと。土器は想定通り900mmより下の出土で、おそらく建物本体の下はさらに多く出土する可能性がある。つまり、住まい全体が蓋のようになり埋蔵文化財がタイムカプセルのように温存される状態。「埋蔵物は技術の進んだ未来の調査に託すかたちとなる。文化財保護の観点から理想的な建設とも言える」そういう見解でした。とても面白い考え方だと思います。

<対処>
土器そのものの対処については、文化財保護課担当者の方が出土した箇所を撮影し、深さや位置関係について克明に記録。予め用意されていたビニール袋に入れ持ち帰りました。丁寧な作業に感銘を受けます。図面に書き入れる様子を見せて頂きながら、目に見える環境を超えた縄文の空間を感じた貴重な時間でした。ご縁で携わることになった家づくり。設計した住まいが「地域の埋蔵文化財を守っている」と思うと少し誇らしい。

 


浄化槽設置場所の土を掘り出したタイミングで、文化財保護課担当者の方による調査が入りました。


掘削の表面全体を手作業で薄く土を削ぎ落しながら、何かしらの出土を調べるかたちで進行しました。


深さ1200mmのところから私の目の前で縄文土器のかけらが2つ出土しました。


触っても良いとのこと。直接触れ歴史を感じることが出来ました。


出土した箇所を撮影し深さや位置関係を克明に記録。丁寧な作業に感銘を受けました。

 

※埋蔵文化財包蔵地とは「地中に埋蔵された状態で発見される文化財」を包蔵する土地、またはその範囲のこと。法律用語だが、考古学用語のいわゆる「遺跡」に最も近い概念である。文化庁によると、貝塚や古墳、城跡、都城などの遺跡(埋蔵文化財包蔵地)は全国におよそ46万箇所存在するとされる。 ウィキペディアより