◆敷地正面の案内板。大正15年作家の里見弴(さとみとん)
の住宅として自ら設計に携わり建築された建物であることが
分かります。
街や建築の保全再生は、どの地域でも必ず課題となります。
独りよがりな修復等で、歴史的建築の国際的な価値を減じ
ないための、広い視野の知識と、技術の一端を学ぶ機会。
JIA(日本建築家協会)文化財修復塾に参加しました。
場所は、鎌倉市西御門の「石川邸(旧里見邸)」
建築家の久恒利之さんが、建物オーナーよりお借りし、
建築設計事務所として活用しながら、同時に
「西御門サローネ」として運営。
イベントの企画や、貸しスペースにおける売上の一部を、
建物の維持修繕費等にあてるなど、
活きた歴史を、自ら繋いでおられる貴重な建築です。
横浜の歴史的建造物の調査・改修等を数多く手掛け
られている、建築家の越智英夫さんによるレクチャー後、
参加者2人一組で、現地屋内の実測調査実習を行いました。
実測&記録を繰り返し、進めていると、
ただ眺めているだけでは感じない、寸法や形態リズムの
美学が、何となく伝わってくるので面白いですね。
とても勉強になりました。
◆石川邸外観正面。庇を支える柱は「バンデッドコラム」。
下部石製手摺の加工形状は「ごまがらじゃくり」と
呼ぶとのこと。(越智氏レクチャーより)
◆建物正面にサンルーム有り。屋内外の繋がりと、
利活用の様子を想像すると、「縁側」に近い印象です。
◆建物の奥に渡り廊下で繋がる茶室がある。茅葺き屋根の
和風空間。窓下は無双窓がしっかり保全され機能している。
◆越智英夫さんによる、歴史的建造物調査・報告書づくり
等のレクチャー。以下は、その一部。ある意味科学的であり、
他分野においても活かせる技術。勉強になりました。
・芯を疑う。例えば、計ることなく柱間の寸法を910mm
だと思い込まない。僅かな違いに、重要な寸法が隠れている
可能性があるからだ。
・調査とは、建築を言葉に置き換える作業。広いとか大きい
とか印象を述べるのでなく、具体的に何mmなのか、
何坪なのか、実測し根拠のある数量を記録することが重要。
・根拠不明瞭の場合は断定しない。推定する、思われるなど
という伝達技術を身につける。報告書にウソがあっては
ならないからだ。記録日や記録者明記も必須。
・調査後は、皆で総括する。個別の記録メモをそのままに
せず、皆で意見を出し合うことで、より客観的な記録を
残す。一人で判断しないことが重要とのこと。 等々
◆屋内外とも見どころ満載の玄関ホール部分。建築家の
三上紀子さんとコンビで実習。実測&展開図作成を担当
しました。
◆建物内の一角は、久恒利之さんの建築設計事務所。
庭を愛でる高い天井の落ち着いた空間。とても素敵でした。
お忙しいところ御案内頂き、ありがとうございました。