年末年始は12/29から1/5までお休みさせて頂きます。

2019年12月25日


崖の切れ目に忽然と現れる神秘的な「投入堂」。先に着いた方々からも気持ちの高揚を感じました。

 

プロセスの大切さ

場所は世界一高濃度のラジウム温泉が噴出することで知られる島根県中央部の三朝温泉(みささおんせん)郷。西暦1100年前後に建立されたと言われる密教建築の遺構「投入堂(なげいれどう)」が、起伏豊かな深い森の奥に現存します。以前から是非観たいと思っていたのですが、機会あって夏に妻と二人で訪れることが出来ました。

観光ガイドブックや各種情報から、事前に登山対応の靴と動きやすい衣類を準備。転倒や転落も有り得るということで、少々緊張感をもって現地へ参りました。管理棟で入山のサイン。万が一戻れない場合に救出して頂くためです。何かあるといけないので必ず2人以上で参拝がルール。想像していたより険しい道のりでした。毎年、来訪者の滑落事故があることもうなずけます。修行の場なので当然と言えば当然。木の根や岩をよじ登るなど、かなり急勾配の場所もあり息があがります。休憩を取りながら、全身びっしょり汗をかき約1時間。崖の切れ目に忽然と現れる「投入堂」にたどり着きました。神々しい。。。感動です。

一方、例えば駐車場に車をとめ歩いて直ぐ「投入堂」に着いていたら、その感動はあっただろうか?。足元の土や岩、木の根や落ち葉の感触。木々の隙間から差し込む太陽の光や微風。先の読めない崖上を想像するワクワク感。途中で休みながらスナップ撮影を楽しんだり、一歩一歩進むプロセスそのものが丁寧なアプローチとなり、クライマックスとなる建築との出会いが忘れ難い体験となっています。来訪者が後をたたない重要な要素と感じました。

 

2020年へ

アクセスの容易さや明確さは、街や建築の大切な機能となります。しかし投入堂との出会いのように、アクセスの歪さや不自由さが、かけがえのない感動を生む不思議な機能になることもある。街や建築の魅力は一筋縄でいかない。そう簡単ではない。様々な場所や環境体験から、その魅力や課題を設計活動に活かして参りたいと思っています。

年末年始は、12/29から1/5までお休みさせて頂きます。来年は東京オリンピック開催など華やかな動向の中、踊らされることなくブレない軸足も問われる一年となります。古川都市建築計画一級建築士事務所は、2020年もより魅力ある空間設計を目指します。皆さま良いお年をお迎え下さい。

古川達也

 


参拝というよりほぼ登山。妻が意外と身軽であることに気が付く。笑


平安時代に建てられ900年を超えて現存。何度か手を加え修復の歴史を重ねてきたようですが、大事な点は建築の寿命の決め手が、建て易い平らな地盤でもなく、十二分な筋交いや耐力壁でもなく、優良なハイテク建材でもない何かであると言わざるを得ないことです。短命で残念なものづくりがあふれる社会。忘れかけている学びもあるように感じます。

 

墨田区曳舟駅周辺の街並み視察

2018年10月7日


街のどこからも見えるスカイツリーが常に印象的。

 

墨田区曳舟駅周辺の街並み視察

芝浦工業大学 環境システム学科 3年生後期必修授業
2018年度「環境システム応用演習」。街の問題や魅力を
発見し、より良い街のビジョンを提案するプロジェクト
を行うため、指導教員の中村仁先生の案内で、学生の
皆さまと一緒に墨田区曳舟駅周辺を視察しました。

街のほぼ全域が海抜ゼロメートルより低く、水害に
対する危機と向き合う街です。一方、狭く入り組んだ
道空間を生活圏とする古い街並みも残り、火災や震災対策
などの取り組みも、各所に見られる街だと実感しました。

特に、防災の意識を高め、その活動を広める拠点と
して生まれた「ふじのきさん家」は、ご案内頂いた
中村先生も関わられた、とても興味深い取り組みです。
古い木造の家を、防火・耐震改修し、その手法がそのまま
見られるよう工夫。街の誰もが出入り出来るよう運営され
雨水の貯留利活用や、学生の調査研究による、きめ細かな
防災マップの作成、防災拠点を巡る「防災遠足」などの
企画拠点として、活きた啓蒙活動が継続されていることに
感心しました。

近年、街のどこからも見えるスカイツリーが印象的な
街になりました。歴史の新旧が対峙する日常風景。
アンバランスであることを超え、街の元気として
かけがえのないシンボルとなる日がくるように思います。



街の要所にある公園では、防災情報の看板が見られます。




防災の意識を高め、その活動を広める拠点として生まれた
寄り合い処「ふじのきさん家(ち)」を見学。運営する
土肥秀生さんに解説頂き、とても貴重な機会となりました。



雨水の利活用をひろめる憩いの場「雨カフェ」や、街角の
「路地尊」など、比較的新しい取り組みが、街に馴染み
文化となる好例として、中村先生にご案内頂きました。
ここには街づくりの重要なヒントがあるように思います。

 

東京大学総合研究博物館/アーキテクトニカ

2018年04月29日

丸ノ内線 茗荷谷駅から徒歩10分ぐらいでしょうか。
縁あって近くを通り、偶然見つけて誘われるように入館した
東京大学総合研究博物館/アーキテクトニカ。

今までこのような場所があったことを知りませんでした。
建築を学んだ学生時代に出会った、
難解で強烈な名建築の模型が、良い意味で飾り気なく
同スケールで比較出来る展示。

メリニコフ自邸、ストンボロー邸、ヴィラロトンダ等々、
ワクワク感と共にとても元気をもらいました。


館内への素敵なアプローチ


メリニコフ自邸、ストンボロー邸


ヴィラロトンダ


最小限住宅、スカイハウス


一人で思わずうなってしまった、原邸
ちょっと感動です♪
「住居に都市を埋蔵する」まさに^^


嫌いだという人を聞いたことが無い、落水荘。
他の多くの模型は、概ね建築本体のみで表現している
のですが、落水荘は周りの地形を表現する必要があって、
やはりランドスケープ※と一体なんだな~と、
あらためて感じることが出来ました。

※ランドスケープ:景観を構成する諸要素のこと。
地形、環境、歴史などの要素からなる空間、風景、都市
そのものを示すこともあります。

ボートで街歩き

2016年02月27日

 

ボートで街歩き

横浜市と東京ベイガードさんご協力による
JIA神奈川主催「かながわ建築祭2016」の企画に参加。
横浜震災復興橋梁を中心に、ボートに乗って
横浜を水面から見つめました♪
@大岡川〜中村川

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重厚な佇まいの「長者橋」の橋詰め「日の出桟橋」
からスタート。大岡川を上ります。

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橋の下からみる、縁取られた景色は印象的です。

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水際へアプローチ出来る場所は、実際の利活用以上に
水景と街を意識的に繋いでいることが実感できます。
活かしたい空間ですね。

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ガイドは、JIA笠井三義さん。
詳しい解説ありがとうございます。中村川に入り横浜港へ
下っていきます。水面から見上げる吉野橋は、
高速道路に負けない存在感があります。

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船上で頂く、ホットワイン。最高です!
JIA山口さん、色々準備ありがとうございます。

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とても美しい鉄骨構造の「谷戸橋」。
横浜港に出る前のクライマックスと言えます。

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船上からしか観ることの出来ない「谷戸橋」のディテール。
鉄骨の繊細な工夫が良く分かります。

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横浜港へ出ました。ベイブリッジ方面へ!

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みなとみらい方面へ!

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ランドマークタワーへ!

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生糸が運ばれた歴史を物語る遺構、汽車道をくぐる。

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吉田新田を一回りして大岡川に戻ってきました。

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水際に張り出す飲食街。魅力あります。

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グランドフィナーレ?!長者橋に到着です。
皆さまお疲れさまでした。

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今回の企画案内。数少ない貴重な機会だと思いました。

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神奈川新聞でレポート記事が掲載されました。

 

鎌倉市重要景観建造物指定「石川邸」を体験。

2015年10月14日

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◆敷地正面の案内板。大正15年作家の里見弴(さとみとん)
 の住宅として自ら設計に携わり建築された建物であることが
 分かります。

街や建築の保全再生は、どの地域でも必ず課題となります。
独りよがりな修復等で、歴史的建築の国際的な価値を減じ
ないための、広い視野の知識と、技術の一端を学ぶ機会。
JIA(日本建築家協会)文化財修復塾に参加しました。

場所は、鎌倉市西御門の「石川邸(旧里見邸)
建築家の久恒利之さんが、建物オーナーよりお借りし、
建築設計事務所として活用しながら、同時に
西御門サローネ」として運営。
イベントの企画や、貸しスペースにおける売上の一部を、
建物の維持修繕費等にあてるなど、
活きた歴史を、自ら繋いでおられる貴重な建築です。

横浜の歴史的建造物の調査・改修等を数多く手掛け
られている、建築家の越智英夫さんによるレクチャー後、
参加者2人一組で、現地屋内の実測調査実習を行いました。

実測&記録を繰り返し、進めていると、
ただ眺めているだけでは感じない、寸法や形態リズムの
美学が、何となく伝わってくるので面白いですね。
とても勉強になりました。

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◆石川邸外観正面。庇を支える柱は「バンデッドコラム」。
 下部石製手摺の加工形状は「ごまがらじゃくり」と
 呼ぶとのこと。(越智氏レクチャーより)

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◆建物正面にサンルーム有り。屋内外の繋がりと、
 利活用の様子を想像すると、「縁側」に近い印象です。

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◆建物の奥に渡り廊下で繋がる茶室がある。茅葺き屋根の
 和風空間。窓下は無双窓がしっかり保全され機能している。

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◆越智英夫さんによる、歴史的建造物調査・報告書づくり
 等のレクチャー。以下は、その一部。ある意味科学的であり、
 他分野においても活かせる技術。勉強になりました。

・芯を疑う。例えば、計ることなく柱間の寸法を910mm
 だと思い込まない。僅かな違いに、重要な寸法が隠れている
 可能性があるからだ。
・調査とは、建築を言葉に置き換える作業。広いとか大きい
 とか印象を述べるのでなく、具体的に何mmなのか、
 何坪なのか、実測し根拠のある数量を記録することが重要。
・根拠不明瞭の場合は断定しない。推定する、思われるなど
 という伝達技術を身につける。報告書にウソがあっては
 ならないからだ。記録日や記録者明記も必須。
・調査後は、皆で総括する。個別の記録メモをそのままに
 せず、皆で意見を出し合うことで、より客観的な記録を
 残す。一人で判断しないことが重要とのこと。 等々

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◆屋内外とも見どころ満載の玄関ホール部分。建築家の
 三上紀子さんとコンビで実習。実測&展開図作成を担当
 しました。

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◆建物内の一角は、久恒利之さんの建築設計事務所。
 庭を愛でる高い天井の落ち着いた空間。とても素敵でした。
 お忙しいところ御案内頂き、ありがとうございました。